第4回 現地法人を設立する時に

12. 連邦ID番号の取得(フォームSS-4)

 

一部の自営業者を除き、米国で事業を遂行するあらゆる法人・事業者は、IRSより連邦の納税番号を取得する必要があります。これは一般に連邦IDナンバーといわれ、連邦納税番号とも呼ばれ、通常”FEIN”(Federal Employer Identification Number)または単に”EIN”という略号で使用されるときもあります。

 

但し、以下に該当する自家営業及びLLCは,「EIN」を取得しなければなりません。

 

  • 一人以上の従業員に給与・賃金を支払う場合。

  • 退職年金制度を有しているか、アルコール・タバコ・銃器に係る申告をする場合。

  • オレゴン州から営業許可を得るためにEINの取得を指示されている場合。

 
EINを取得するためには、フォームSS-4をIRSに郵送します。オレゴン州にはIRSのオフィスが、ポートランド、セーレム、ユージーン、ベンド、メドフォードの5ケ所にありますので、急ぎの場合は直接持参しますと、問題ない限り番号をくれます。
2008年より、オンラインで申請すると、即刻番号を取得できるようになりました。
またSS-4をファックスで送りますと、フォームの中に申請者のファックス番号が記入してあれば、5営業日以内にEINがファックスで返信されますが、記入されていないと約2週間かかります。また通常の郵送の場合ですと、約4週間を要します。
 
尚、SS-4をIRSに申請すると,IRSの他、社会保障庁、労働省にも自動的に雇用者として登録されます。
 
 

13. 米国身障者法(Americans with Disabilities Act =ADA)

 
米国身障者法(ADA)は、雇用・公共の場で身体障害者に対する差別を禁じた連邦法です。ADAは、公共施設に身障者のための設備やサービスを義務付けています。多くの民間企業もこの公共施設にあてはまります。ADAは、「公共施設」とは規模にかかわらず、宿泊施設・劇場娯楽施設・公園広場・展覧会場・教育施設・飲食店・販売又はリース施設・サービス施設・駅・福祉施設の12の施設に義務付けています。
 
勿論ADAは民間企業にも適用され、年間で20週間、15人以上を雇用している企業に対し、雇用に係わるいかなる「能力ある身体障害者」に対する差別も禁止しています。
 
尚、従業員6人以上の企業は、オレゴン州身障者法が適用されます。
 

14. 建築・造園届け出の必要性

 
オレゴン州には、建築登録法(Construction Contractor Registration Act)という法律があり、不動産の造成も含めあらゆる有償建築活動を行う場合、建築当事者はオレゴン建築委員会(Oregon Construction Contractors Board)に届け出ることを義務付けています。一方、造園業者も造園委員会(Landscape Contractors Board)より許可を受けなければなりません。
 
一部の例外を除き、あらゆる営業活動を行う個人及び法人は、いかなる建築、増改築、改装、修繕案件を、住宅・商業・工場ないしは公共事業を問わず届け出しなければなりません。検査、樹木サービス、洗浄、煙突清掃も同様です。違反しますと、一件につき$5000以下の罰金に処せられます。
 
建築業者及び造園業者は、業界保険に加入していなくてはなりません。さらに登録をする前に建設業者は、16時間の研修を受け、テストをパスしなくてはなりません。また、塗装をする業者はオレゴン保健局から認可を取得する必要があります。住宅検査業者は建築委員会から資格を得ていなければいけません。造園業者はいくつかの試験をパスし、資格を与えられていなければなりません。
 
また建設業者は、従業員を有するNonexemptか従業員のいないExemptかを登録しなければいけません。
 
さて建築事業に従事する当事者が、従業員なのか独立した第三者の請負人(Independent Contractors or Subcontractors)なのか微妙な場合があります。登録したすべての建築業者は、従業員ではなく独立請負人なる旨明記された証明書に署名していますが、オレゴン州では、8項目の基準を満たしていれば、法律上「独立請負人」と認められます。詳しくは後述の独立請負人の定義をご参照下さい。建築業者が例え「独立請負人」として登録した個人を雇用しても、必ずしも給与税を免れることができるものではありません。「独立請負人」として認められる、すなわち給与税賦課の対象とはならないためには、独立請負人の8項目の基準をすべて満たすことが必要条件です。
 
 

15. オレゴン州に於ける法人登記

 
経営、法的かつ税務上、最も相応しい業態の検討が終わりましたら、雇用者としてオレゴン州に登録し、雇用の準備をすることになります。
 
いかなる雇用者も給与を支給する前に、オレゴン歳入局に”COMBINED EMPLOYER’S REGISTRATION”というフォームで登記し、州に源泉徴収と失業保険の雇用者勘定を準備しなければなりません。
 

“Combined Employer‘s Registration Form” (Form #150-211-055)

 
オレゴン州に於いて雇用又は給与を支給する前に、雇用者は必ずこのフォームをオレゴン州歳入局(Oregon Department of Revenue = ODR)に届け出なければなりません。
 
届け出を受けたODRはオレゴン州の雇用者番号を通知します。雇用者はすべてのオレゴン州当局との諸報告、給与税や失業保険の支払い等事務連絡・手続きに、この番号が使用されます。これはODRだけでなく、雇用局(Employment Department)や消費者事業保護局(Department of Consumer & Business Services = DCBS)によって管理されている事項のID番号となります。すなわち、歳入局で管理される源泉所得税や交通税、雇用局で管理される失業保険税、DCBSで管理される労災保険などに使用される番号です。
 
給与には原則として、源泉所得税、失業保険税、交通税、労災保険税などが賦課されますが、必ずしもすべてに賦課されるとは限りません。
 
一人でも報酬を受ける従業員を有する法人はすべて、Combined Employer‘s Registrationフォームを届け出なければなりません。すなわち、例え一人のオフィサーしかいない法人でも、報酬を受けていれば、税法上「従業員」とみなされます。
 
 

16. 法人行為の開始に必要な手続き

 
基本定款(ARTICLE OF INCORPORATION)
 
会社設立時、州法人局に提出しなければなりません。これには商号・事業目的・授権資本・住所・取締役名・登録代理人(REGISTERED AGENT)・発起人(1名でよい)等が明記されています。
 
付属定款(BYLAWS)
 
会社の経営規程が盛り込まれています。即ち、株主総会や取締役会の開催規程・役員の責任と権限・決算・配当・役員会規程、その他基本的法人行為の基準が明記されています。オレゴン州では社長と秘書役の登録が義務付けられています。
 
株式発行引受契約書(STOCK SUBSCRIPTION AGREEMENT)
 
会社と株主の間で株式発行と引受につき、当該株主の持ち株を明記した契約を締結します。
 
第一回取締役会議事録(ACTION OF THE BOARD OF DIRECTORS)
 
会社として上記の定款の採用を決議し、経営最高責任者(CHIEF EXECUTIVE OFFICER)、その他の役員(OFFICERS)の任命、取引銀行の決定等を決議します。
 
 
以上の「四種の神器」が完備して、当初資本金が一部でも入ると、はじめて法人行為が可能となります。
 
 
 

17. 雇用する時の必要な手続き

 
○ 米国で労働可能なことの確認義務
 
会社は新規採用従業員が法的に米国で労働可能かどうか確認する義務があります。
このため労使双方でフォームI-9 (Employment Eligibility Verification) を作成し、従業員はエビデンスを会社に呈示し、会社は人事ファイルとして写しを保管します。
 
○ 源泉徴収控除係数申告書の徴求
 
会社は採用時、従業員が作成署名したW-4 (Employee’s Withholding Allowance Certificate) を提出してもらい、これも人事ファイルに保管しなければなりません。
これは源泉徴収の控除係数を申告するもので、提出がない場合は「独身」控除係数「ゼロ」として源泉徴収を行うことになります。
万一、W-4に(1)週給200ドル以上で源泉徴収を免除、または(2)10ポイントを超える控除係数のものがあれば、会社は源泉徴収の四半期報告(フォーム941)を申告する際に、その写しを当初一回限りですが、W-4の写しを同封しなければなりません。IRSは、これが妥当かどうか当該個人の所得の実態を調査する為です。
 
○ ソーシャル・セキュリティ番号
 
会社は、新規採用従業員のソーシャル・セキュリティ番号を確認するため、ソーシャル・セキュリティ・カードの提出を求めることができます。その写しを人事ファイルに保管します。
 
○ 新規採用従業員の州への報告
 
新たに従業員を採用した時に、会社は州雇用局に報告しなければなりません。これは州及び連邦レベルでの子女養育控除などの親と子供をマッチング調査することに加え、失業保険、身体障害保険、労災保険制度の適用に不可欠です。
 
オレゴン州では、四半期報告である OREGON COMBINED PAYROLL TAX REPORTの中に、フォーム132 (Unemployment Insurance Employee Detail Report) で報告すればいいことになっています。