第7回 米国連邦とオレゴン州の源泉徴収税制(その三)

 

 

源泉徴収の報告義務

 

IRSへの源泉徴収の報告

 
雇用者は、IRSに対し四半期毎に「フォーム941(Employer's Quarterly Federal Tax Return)」を申告しなければなりません。これはチップも含めいわゆる賃金・給与から源泉徴収した所得税とFICAを報告するものです。
 
フォーム941の申告期限は次の通りです。
 
          四半期           四半期末            申告期限
          1月〜3月       3月31日          4月30日
          4月〜6月       6月30日          7月31日
          7月〜9月       9月30日          10月31日
          10月〜12月   12月31日        翌年1月31日
 
尚、フォーム941の年間総額は、源泉徴収票W-2(Wage and Tax Statement)そしてW-2の年間総計を表したW-3(Transmittal of Wage and Tax Statements)と合致していなければなりません。W-2とW-3は社会保障局(Social Security Administration = SSA)に年次報告する義務があります。しかしIRSにはW-2、W-3の年次報告は不要です。雇用者が事業を中止した場合や、従業員がいなくなった場合は、フォーム941に「FINAL」と明記します。
 
一方、農業関連雇用者は、源泉徴収税(所得税とFICA)にはフォーム943を使い、年次報告することになっています。農業に係る雇用の特例や納税方法など、詳しくはIRS公示第51号に明示されています。
また雇用者が、給与賃金以外の所得(福利厚生制度、年金、IRA、ギャンブル賞金等)に対し源泉徴収を行った場合は、フォーム943により年次報告しなければなりません。申告期限は翌年の1月31日です。
 
 

オレゴン州への源泉徴収の報告

 
雇用者は、たとえ当該報告期間に給与支給実績がなくても、オレゴン州歳入局に源泉徴収報告「フォームOQ(Oregon Combined Tax Reports)」を提出しなければなりません。たとえ源泉徴収額がゼロでも申告しなければなりません。一部の農業関係雇用者を除き、一般の雇用者は四半期ごとに申告する必要があります。
 
申告期限は次の通りです。
 
          四半期           四半期末            申告期限
          1月〜3月       3月31日          4月30日
          4月〜6月       6月30日          7月31日
          7月〜9月       9月30日          10月31日
          10月〜12月   12月31日        1月31日
 
 
IRSにフォーム943(Employer's Annual Tax Return for Agricultural Employees)を申告する農業関連雇用者(年一回申告;期限翌年1月31日)を除き、一般の雇用者は四半期毎の申告を義務付けられています。フォームOQ(Oregon Quarterly Combined Tax Report)を提出しなければなりません。
 
さらにすべての雇用者は、年次源泉徴収合計報告フォームWR(Oregon Annual Withholding Reconciliation Report)を翌年2月末までに提出しなければなりません。万一当該年度中に事業を中止した場合は、最終給与支給日から30日以内に、同様の年次報告の提出する必要があります。
 
給与を支給した雇用者は、年間の源泉徴収票(W-2)を作成しなければなりません。源泉徴収票は連邦や州・地方公共団体用に6枚綴りで、特に代替様式を使用する場合は別途承認されていなければなりません。雇用者は源泉徴収票を翌年1月末までに従業員に送付しなければならないことになっています。
もし従業員が退職した場合、雇用者は最終給与支給日から30日以内に従業員に源泉徴収票を提出する必要があります。もし提出後、源泉徴収票の内容を訂正する必要がある場合、速やかに訂正後の源泉徴収票を再送付します。また再発行の要求がある場合は、コピーに"Reissued by Employer"とハッキリと表記して再発行します。
 
 

源泉徴収票(W-2)に関する雇用者の義務

 
 
源泉徴収票(W-2)の年次報告義務
 
雇用者は、毎年1月末までに源泉徴収表を作成し、1月末までに従業員に配付しなければなりません。さらに源泉徴収票総合票(W-3)を作成し、IRS及びオレゴン州に年次報告を翌年2月末までに申告する義務があります。
 
 

源泉徴収票の処理手続き

 
従業員個々の源泉徴収票が「W-2」、すべてのW-2を集計した合計票が「W-3」です。
「W-2」は6枚複写式のフォームから成っており、以下のようにページ番号が付記されています。
 
COPY A → 雇用者経由、社会保障管理庁(SSA)行。
COPY 1 → 雇用者経由、オレゴン州歳入局行。
COPY B → 従業員行。
COPY C → 従業員行。
COPY 2 → 従業員行。
COPY D → 雇用者控え。
 
「W-3」は、複写式ではなく一枚だけの様式です。
 
W-3 → 雇用者経由、社会保障管理庁(SSA)行。
W-3のコピー → コピーをとり雇用者控えとします。
 
 

雇用者の義務

 
​(1) 従業員へのW-2の配付
 
 
雇用者は、毎年1月末までに各従業員に前年のW-2の内、COPY B, C及びCOPY 2を送致しなければなりません。年内に退職した従業員に対しては、要求あれば30日以内に、又は最終給与賃金の支給日から30日以内に送致すればいいのですが、要求ない場合でも翌年の1月末までに退職従業員に送付しなければなりません。
 
 
(2) 保障管理庁に対する報告
 
 
雇用者は、各従業員のW-2の「COPY A」に「W-3」を添付して、翌年2月末までに郵送にて報告をしなければなりません。
 
郵送先は:
    
SOCIAL SECURITY ADMINISTRATION
DATA OPERATIONS CENTER
Wilkes-Barre, PA 18769-0001
 
(但しCertified Mailで郵送する場合のZIP CODEは、18769-0002となります。)
 
 
 

郵送上の注意事項

 
W-2が複数ある場合は、LAST NAMEでアルファベット順に並べるか、又はソーシャルセキュリティー番号順に並べること。
W-2とW-3は自動読み取り装置を使用するため、テープで貼ったり、ステープルで留めたりしないこと。
フォームは折り曲げず、全ページをそのままフラットに封筒に入れ郵送のこと。
 
 
 
(3) オレゴン州歳入局に対する報告
 
 
雇用者は、各従業員のW-2の「COPY 1」にフォーム「WR」を添付して、翌年2月末までに下記に郵送、報告をする義務があります。
 
 
OREGON DEPARTMENT OF REVENUE
PO Box 14260
Salem, OR 97309-5060
 
 
オレゴン州の場合も、テープやステープルで留めたりせず、またフォームOQとは別に送らなければなりません。
 
 
(4) 雇用者の源泉徴収関連書類の保管義務
 
雇用者は、W-3のコピーをとり、W-2の「COPY D」と共に、4年間保管しなければなりません。
 
 
 

源泉徴収に関する罰則

 
雇用者は従業員の源泉徴収業務に関し責務があります。従って雇用者は税法に則って源泉徴収を行い、納税し、そして報告を怠ってはいけません。
 
オレゴン州では、万一雇用者が3年間報告を怠りますと、税額総額の100%のペナルティーを課せられます。納税自体が遅れますと納税額の5%のペナルティーが賦課されますとともに、遅れた期間につき年利9%の日割り計算で請求されます。遅延期間が60日を超えますと、金利は13%になります。
またOQの申告が3ヶ月以上遅れますと、納税期限時点での税債務額の20%のペナルティーが追徴されます。3年間遅延しますと100%のペナルティーです。加えて未納税額については、期限から金利が賦課されることは言うまでもありません。
万一源泉徴収税が未納となった場合、当該企業の役員、パートナー又は源泉徴収責任者個人の責任を追求されることになりますので、納税と報告義務を慎重に果たすことを肝に銘ずるべきです。
 
 

源泉徴収の中止

 
事業を中止した場合や、従業員がいなくなった場合、オレゴン州の源泉徴収勘定を閉鎖しなくてはなりません。そのためにはフォーム"Change in Status Report"をオレゴン州雇用局に提出します。
 
 

文書保存期間

 
源泉徴収に係る情報の文書保管期間は、申告期限から5年です。
尚、米国の法人は財務諸表や確定申告書を正確に記録・申告し、本社で保管することが義務付けられています。
 
一方、雇用/給与関係の書類の保存期間は、税法で「4年」と定められています。