米国の社会保障税
社会保障税
社会保障税(Social Security Tax, FICA=Federal Insurance Contributions Act)は連邦税で,1991年から二つの部分に分けられました。
一つめは、老齢年金・遺族年金・身障者保険制度のための国民福祉年金制度に相当するものです。
二つめの部分は、老齢医療保険制度でメディケア(MEDICARE)と呼んでいます。
これらの二つを総合してFICAと略称で呼んでいます。フォーム941及びW-2には、この二つの部分を分けて明示しなければいけません。
社会保障税は、現在,従業員と雇用者が各6.2%の折半負担、合計12.4%課税されますが、課税限度が毎年決められており、2014年は,一従業員の給与総額の$117,000まで課税されますが、この限度額を超えると課税されません。
メディケアは、従業員と雇用者が1.45%の折半負担、合計2.9%課税され、これは課税給与額の上限がなく課税されます。
1990年1月1日より、農業関連雇用者も連邦所得税とFICAを源泉徴収しなければなりません。
日米社会保障協定
2005年10月1日に「日米社会保障協定」が発効しました。
これにより日米両国での公的年金など社会保険料の二重払いがが解消され、かつ年金受給資格を判断する際に、両国の保険料納税期間を通算できることになります。
原則として米国派遣期間が5年以内の「一時派遣」の駐在員は、派遣元である日本でのみ保険料を払えばよい、即ち米国のFICAの納税が免除されます。
このため日本の派遣元は、日本年金機構(旧社会保険庁)より,日本で社会保険を継続納税している旨の「適用証明書」の交付を受け、米国FICAの源泉は必要ないとの告知を受け,原本を米国に持、米国雇用者に参呈示しないと,免税の適用は受けられません。
失業保険税制
オレゴン州の失業保険税
失業保険税は給与税であり、すべての費用は雇用者の負担です。雇用局によって徴集された失業保険税は信託勘定に預託され、失業者に対する失業保険の給付資金に限定して使われます。
失業保険税の対象となる雇用者
次のいずれかに該当する雇用者は、失業保険税が賦課されます。
雇用者は、失業保険に関し、以下の責務があります。
失業保険税の課税対象所得には毎年課税限度を設けており、2014年は$35,000まで賦課されます。給与所得がこれを超えますと課税されません。新たに設立された雇用者は、一定期間3%の失業保険税率が適用されますが、その後は1%から5.4%までの税率が通告されます。雇用者の勘定(失業者)の失業保険申請実績が料率を上下します。
一般企業はあらゆる給与賃金に対し失業保険税を支払わねばなりませんが、家族の一員が企業の実質所有者でオフィサーでありかつ取締役である場合、失業保険税を支払わないことを選択することができます。これに該当し選択したい場合は、書面でその旨届け出れば、届け出た四半期の第一日目から有効になります。
また、LLCやLLPのメンバーやパートナーも失業保険税の納税は免除されています。
失業保険税に係る報告
雇用者は、オレゴン歳入局、雇用局、及び労災局に四半期毎に報告を義務付けられています。最低限、フォームOQ(Oregon Quarterly Tax Report)とフォーム132賃金明細報告書(Employee Wage Detail Report)の申告が必要です。期限は、四半期末の翌月末までです。
納税は、期限までにOTC(Oregon Tax Coupon)を添えオレゴン歳入局に郵送します。
連邦の失業保険税
四半期に1,500ドル以上の給与賃金を支払っている雇用者、又は20週雇用している従業員が一人以上いる雇用者は、連邦失業保険税を支払う義務があります。1985年以来、連邦失業保険税率は6.2%で、課税上限は従業員一人につき$7,000までです。但し、州の失業保険税を支払っている場合、5.4%の引き下げが認められております。従って、その場合は実質の連邦失業保険適用税率は0.8%となります。
連邦失業保険税の報告は、翌年1月31日までです。連邦失業保険税の総額が四半期$500以上(2005年改正)の雇用者は、連邦納税クーポンを使い銀行を経由して四半期毎に納税をしなければなりません。年初から四半期毎に$7,000になるまで、0.8%の税率を掛け税額を算出します。
なお2011年の連邦保険失業税率は,2011年6月30日迄は6.2%のままですが、2011年7月1日以降,0.2%引き下げられ,6.0%となります。
オレゴン州での失業保険給付の仕組み
通常,オレゴン州の失業保険給付金は26週の間支給されます。
その後連邦からEmergency Unemployment Compensation=EUCとおして最長53週間,合計79週間支給されます。但し,現支給期間は時限立法ですので,現状2012年12月末までです。一部の失業率が高い州には,さらに20週の延長が認められる場合があります。
オレゴン労働災害保険
オレゴン州で事業をする雇用者は、一部の例外を除きオレゴン労働災害補償法(Oregon Workers' Compensation Law)が適用されます。雇用者は雇用をする前に労働災害保険に加入しなくてはなりません。
次の場合は例外で、労災を付保する必要がありません。
労災保険の加入には、次の二つの方法を認めています。
一つは保険会社に加入することです。労災を取り扱う代表的な保険会社はオレゴン州が所有するSAIF CORPORATIONです。その他300社以上の民間保険会社があります。直接保険会社と取り引きしてもいいのですが、業界団体やその他の団体を通じ関係が深い保険会社と取り引きすることも多いと思います。また、オレゴン州は"Ombudsman for Small Business"という部門があり、種々の相談にのってくれます。
さらに「オレゴン労災プラン(Oregon Insurance Plan)」という制度があります。これはすべてのオレゴン州の雇用者に労災保険に加入できるようにするシステムです。これはNational Council on Compensation Insurance(NCCI)が運営しています。雇用者は、保険会社と労災保険の加入交渉が不調な場合にNCCIに加入申請することができます。NCCIはオレゴン州の最も低い料率を提示した保険会社に特定企業の労災保険の勘定の開設できるよう指示します。
第二は、自己保険です。主に大企業の場合ですが、企業が自分で労災保険制度を持つことができます。この場合、WORKERS' COMPENSATION DIVISION (WCD)から承認を取得する必要があります。
雇用者は労災保険に加入した後、保険会社に"GUARANTY CONTRACT"をWCDに届け出したかどうか確認する義務があります。Guaranty Contractは付保の確約書です。WCDはGuaranty Contractの届け出があった時、雇用者に"NOTICE OF COMPLIANCE"を発行します。雇用者はこれを従業員の見えるところに掲示しておかなければなりません。保険料を支払って30日以内にNotice of Complianceが届かない場合、速やかに確認すべきです。WCDから書面で通告がない限り、労災保険は強制的に有効です。
労災保険料は、毎年秋に決められ、四半期毎の報告書に事前に印刷されています。2013年4月1日以降現在の労災保険料は、一時間当たり3.3セントで、1.65セントは従業員から源泉徴収され、残りの1.65セントは雇用者の負担です。2000年以前は給与支給額に基づいていましたが、現在は労働時間に基づき労災保険税が算出することになっています。
オレゴン州では、四半期毎に源泉徴収の報告義務がありますが、この中に労災保険税の項目もあり、納税も他の源泉徴収税と一緒にOTC(Oregon Tax Coupon)を使い、行います。
オレゴン都市交通税
オレゴン州では、ポートランドとユージーンのニ大都市圏で都市交通税制を採用しています。
ポートランドはTri-County Metropolitan Transportation District (Tri-Met)といい、ユージーンはLane County Mass Transit District (LTD)といいます。これは給与税で、それらの都市圏で事業を営むほぼすべての雇用者が納税義務を負っています。勿論自家営業にも適用されます。
都市交通運行区域ははっきりしており、Tri-Met区域はマルトノマー、ワシントン、クラカマスの3郡の殆どです。LTDの場合は、レーン郡のほぼ三分の二を占めています。
これらの区域で事業活動をする、または事業所があるすべての雇用者は、オレゴン州歳入局に登録し、納税しなければなりません。登録はすでに給与を支給し始める前に"Employer's Combined Registration Report"で届け出されていますので、改めて手続きする必要はありません。
尚、通常の殆どの給与賃金は課税対象となりますが、例えば農業従事者やIRSに承認された非課税法人の給与、いわゆる従業員に直接顧客から支払われた「チップ」等については課税対象から除外されます。
報告と納税は四半期毎にオレゴン歳入局から年初に雇用者宛に送られるOregon Combined Reportsによって行われます。区域内で遂行された役務に対するグロス給与にOregon Quarterly Combined Tax Reportに印字されている料率をかけ合わせ、納税額を算出します。
2014年のポートランド・トライメット税率は、0.7237%で,ここ数年毎年0.01%ポイント引き上げられています。一方LTDの2014年の税率は,0.0070%で,これもここ数年毎年0.01%ポイント引き上げられています。
オレゴン州では、10年間で0.1%の税率引き上げを、法で許容しています。
オレゴン州通行税
オレゴン州通行税(Statewide Trinsit Tax)は、2018年7月1日より実施された個人所得税で、雇用者はオレゴン居住者またはオレゴン州内で勤務する州外従業員に支給した給与総額の0.1%を源泉徴収し、他の給与税同様、州に納税しなければなりません。
但し、他の給与税同様、原則として四半期毎に申告しますが、申告書は現状では、専用の申告書があり、雇用税一括の申告書ではありません。
この税は、前記のオレゴン都市交通税とは、何ら関わりがありません。
課税対象給与総額の上限はありません。
当然ながら源泉徴収した税金は、従業員のW-2に明示されます。
オレゴン法人営業税
オレゴン法人営業税(Corporate Activity Tax=CAT)は、2020年1月1日より始まる税務年度より、適用される新たな法人所得税です。
税法上のオレゴン州に帰属する売上高(Commercial Activity)、75万ドル以上のビジネス法人が対象で、同売上高100万ドルを超える金額に対して、「0.57%+$250」が納税額です。課税所得の算出にあたり、州法は35%の経費控除を認めており、また特定非課税取引も有りますが、これらが差し引かれた金額が課税対象所得となります。
日本企業では、たとえば日本本社に対する売り上げなど州外売りは、特定非課税取引に含まれますので、これは課税対象外所得です。
また、年間5,000ドル超のCAT納税が見込まれる場合、オレゴン州の予定納税の対象となりますので、 注意が必要です。
CATは、歴年申告税ですが、四半期ごとの予定納税が必要です。期限は一般の予定納税同様、第1回が4月30日、第2回が6月30日、第3回が10月31日、第4回が翌1月31日で、年次申告期限は4月15日です。
対象となる法人は、対象課税額が75万ドルを超えると見なされる時点から30日以内に当局に登録を義務づけられています。
例: オレゴン州Commercial Activity=$20,000,000
内、オレゴン州配分売上=$5,000,000
経費控除=$5,000,000 x 35%=$1,750,000
オレゴン課税所得=$20,000,000 - $1,750,000 – 課税基準額$1,000,000=$17,250,000
CAT納税額=($17,250,000 x .0057) + ミニマム税$250 = $98,575
第8回、以上